届く本音がある
川口 真目
kawaguchi masami大阪府
大阪府
子育て・働き方・教育・家族の日常をテーマに、エッセイ漫画を制作。自身の経験をもとに、共感性の高い作品をSNS・Webメディア・書籍を通じて発信しています。暮らしやお金、フリーランスの働き方など、日常に寄り添うテーマをリアルな視点で描き、多くの読者に向けて情報を届けています。KADOKAWAや幻冬舎などの出版社から書籍を出版。
自身の経験をもとに、不登校や子育て、フリーランスの生き方について発信しています。講演やイベントなどを通じて、多様な生き方・選択肢を伝える活動も行っています。
幼い頃、家庭環境は決して穏やかなものではなかった。
両親の仲は悪く、家の中が騒がしくなることも多かった。
そんな日々の中で、安心できる場所になっていたのが、おばあちゃんとの時間だった。
おばあちゃんは絵が上手く、料理や旅行、神社仏閣など、さまざまな世界を見せてくれた。
真っ白な紙に絵を描いていく姿を見ながら、「世界を作るって面白い」と感じるようになる。
また、「女の人でも好きな仕事をしていい」「大人の言うことばかり聞かなくていい」と、いつも自由な価値観を伝えてくれる存在でもあった。
絵を描くことは、ただの遊びではなく、自分自身を守るための時間だった。
今振り返ると、この頃からすでに“表現で生きていきたい”という感覚が芽生えていた。
中学生になると、学校への違和感が強くなっていく。
理不尽だと感じる先生や、周囲に合わせなければいけない空気に、息苦しさを感じていた。
そんな感情をぶつけるように描いていたのが、“先生の似顔絵”だった。
ただ上手く描くのではなく、特徴を誇張してコミカルに描く。
友達は笑ってくれたが、先生には怒られることもあった。
けれど、その頃からすでに「重たいものをユーモアに変える」という、今の表現スタイルの原型ができていた。
嫌なことも、絵にすると少し笑える。
描くことで、自分の感情を整理していた。
今のエッセイ漫画にも通じる、“笑いの中に本音を入れる感覚”は、この頃から自然と身についていた。
高校進学では、偏差値や世間体よりも、「面白い人が集まる場所かどうか」を大切にしていた。
文化祭や体育祭に本気で取り組む自由な校風に惹かれ、「ここなら自分らしくいられるかもしれない」と感じる。
実際に、高校では“好きなことに本気な人たち”にたくさん出会うことになる。
また、高校時代のアルバイト先で出会った店長の言葉も、大きな転機になった。
「人生の6〜8割は仕事。だから好きな仕事を選んだ方がいい」
その言葉を聞き、「やっぱり自分は絵を描きたい」と改めて思うようになる。
“好きなことを仕事にしたい”という想いが、現実的な目標として動き始めた時期だった。
本当は美術大学へ進学したかった。
けれど、「普通の大学へ行きなさい」と反対され、美大進学は叶わなかった。
そこで、“夢を諦める”のではなく、“夢へ近づく別ルート”を探し始める。
イラストや表現の仕事につながる可能性を考え、マスコミや社会学を学べる大学へ進学した。
さらに、「この先生に学びたい」と感じた教授を追いかけ、進学先まで変更。
自分の直感を信じて行動していた。
遠回りしても、自分の好きなことを手放さない。
その姿勢が、後のフリーランス人生へつながっていく。
社会に出た後は、イラストレーターとして活動をスタート。
しかし、「絵が上手い人」は世の中にたくさんいた。
そんな中で辿り着いたのが、“上手さ”ではなく、“共感”で伝える表現だった。
もともと憧れていたのは、イラストレーターではなく漫画家。
特に『銀魂』の空知英秋に強く影響を受け、「重たいテーマもユーモアで伝える表現」に惹かれていく。
そして、“エッセイ漫画”というスタイルへ辿り着いた。
自分自身の感情や違和感を、そのまま漫画にしていく。
SNSやWebで作品を発信するようになると、少しずつ共感の声が広がっていく。
やがて書籍化の話も生まれ、『名もなき家事妖怪』『子育てしながらフリーランス』などの出版へつながっていった。
「漫画は、自分にとってカウンセリングみたいなもの」
そう感じながら、自分自身を整理するように作品を描き続けていた。
大きな転機となったのは、子どもの不登校だった。
最初は戸惑い、受け入れるまでに時間もかかった。
けれど、不登校をきっかけに、これまでとは違う教育や価値観に触れるようになる。
そこには、起業家を学校へ呼ぶ教育者や、“学校に合わない子”ではなく、“新しい才能を持つ子”として向き合う人たちがいた。
「不登校=悪いこと」ではない。
そう思えるようになった時、自分自身の価値観も大きく変わっていく。
そして、その経験を漫画として発信すると、多くの親たちから共感の声が届くようになる。
自分のために描いていた漫画が、いつしか誰かの救いにもなっていた。
現在は、漫画家・イラストレーターとして、子育て・不登校・働き方・教育などをテーマに発信を続けている。
ただ、「誰かを救いたい」と思って描いているわけではない。
「なんでだろう」「おかしいな」と感じたことを、自分なりに整理するために描いている。
人が好きで、人間そのものに興味がある。
だからこそ、人の感情や矛盾を観察し、それをユーモアへ変えていく。
重たいテーマでも、少し笑える。
だからこそ、人の心に届く。
現在は書籍出版だけでなく、SNS・Webメディア・講演など活動の幅も広がり、“共感される表現者”として多くの支持を集めている。
今も、“漫画を描いている”というより、“人間を描き続けている”感覚に近いのかもしれない。
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