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Interview Story

日本の価値を、
世界で“続く形”に。

河野 友香
BranPeak合同会社 創業者兼CEO
Introduction

世界最高峰の芸術の祭典であるフランス・カンヌでデビューしたラグジュアリーブランド「Musubu STUDIO」。
ヴィンテージ帯をバッグやアクセサリーへとアップサイクルし、日本の伝統技術を世界へ発信しているブランドです。
このブランドを立ち上げたのが、BranPeak合同会社の創業者・河野友香さん。

かつて彼女は、外資系ラグジュアリーブランドで日本市場のデジタル戦略を統括し、周囲から「憧れの女性リーダー」と評される存在だった。
しかし、順調なキャリアの中で、次第に胸の奥に静かな問いが生まれる。

「私は何を未来に残しているのだろう?」

その問いを抱え、2023年9月、彼女は安定したキャリアを離れ、翌10月にBranPeak合同会社を設立。
そんな彼女の、起業ストーリーに迫る。

Musubu STUDIO ヴィンテージ帯を身に纏う、アートピース
SECTION01

サラリーマン時代、どんな経験を積んできましたか?

私は、データをもとに事業を成長させる仕事をずっとしてきました。

「どのお客様が、なぜ買ってくれているのか?」
「どうすればリピートしてもらえるのか?」

こうしたことを数字から読み解き、施策に落とし込む仕事です。

外資系ブランドでは、
日本市場におけるデジタルマーケティング、EC、CRMを軸に、
市場戦略やブランドアクティベーション、DXを設計・推進する立場でした。

ブランドの世界観を守りながら、しっかりと数字も出す。
感性とロジックの両方を求められる立場でした。

大きな責任を任せてもらい、やりがいもありました。

SECTION02

それでも退職を決めた理由は?

仕事はやりがいがあり、評価も報酬も十分に満足できるものでした。

それでも、あるときふと立ち止まりました。

日本で生み出された売上や利益が、最終的には海外へ流れていく構造の中で、私はいったい何を積み上げているのだろう――そんな問いが胸に残ったのです。

同時に、自分自身の生き方にも違和感を覚えるようになりました。
朝から晩まで働き続け、常に数字に追われる日々。
「もし神様にひとつ願いを叶えてもらえるなら、アラームをかけずに眠りたい」――そう思うほどでした。

順調なはずなのに、どこか満たされない。

やがて私は自然を求めるようになり、地方を訪れる機会が増えていきました。
地方では心が満たされ、東京に戻れば「消費を促す側」として働く――その往復を重ねる中で、

「自分は価値を生み出す人たちを横目に、消費を加速させる役割しか担っていないのではないか」

という違和感が、少しずつ積み重なっていきました。

必死に文化を守ろうとする生産者の方々がいる一方で、静かに失われていく現実。そのギャップに心を痛めたことが、起業へと向かう大きな背景になりました。

とりわけ、素晴らしい技術を持つ職人さんが「うちの代で終わりだよ」と語る姿を目の当たりにしたときの衝撃は忘れられません。

価値は確かにある。
でも、それを届ける仕組みがない。

そのとき私は強く思いました。

「消費する側ではなく、価値を届ける側に回りたい」と。

SECTION03

起業してから、どんなことをしてきましたか?

最初に、シリコンバレーをはじめとする海外のカンファレンスやブートキャンプに身を置き、AIやWeb3など最先端テクノロジーの知見を吸収。一方で日本では、AIとマーケティングに特化した日本初のカンファレンスを企画・運営し、Web3・AI・マーケティングを軸とした新しい場づくりを実践しました。

並行して、地方での実証プロジェクトにも取り組みました。その一つとして、四国ではコミュニティ主体の地域プロジェクトを立ち上げ、特定の企業や行政だけに依存せず、参加者みんなで支える仕組みづくりを検証しました。

こうした海外での学びと日本での実践を重ねる中で、2024年5月――文化・地域・テクノロジーを結ぶ現在の事業を本格的に始動。日本のヴィンテージ帯を再編集するブランド「Musubu STUDIO」を立ち上げ、同年5月にカンヌでブランドデビュー、9月にはモナコでPOPUPを開始しました。

西陣織や佐賀錦などを中心とした歴史ある帯を現代的に再解釈し、ファッションと文化、テクノロジーを横断する形で世界へ発信しています。これは、日本の文化が単なる“伝統”ではなく、グローバルに共感されるクリエイションであることを実証する挑戦でもありました。

私が大切にしているのは、単発のイベントではなく「続く仕組み」をつくること。地方から世界へ価値が循環し、地域が自走できるモデルづくりを目指して、挑戦を続けています。

カンヌのレッドカーペットで「Cannes Collection 2025」を発表
Musubuクラッチを合わせた海外セレブたち
SECTION04

BranPeakでは具体的にどんな事業をしているのですか?

BranPeakは、「文化や地域の価値を、現代の文脈で再設計し、持続可能に回る仕組みに変える」ことをミッションとしています。

単に商品をつくる会社でも、PR会社でも、コンサル会社でもありません。私たちが取り組んでいるのは、価値の流れそのものをデザインすることです。

具体的には、次のようなことを行っています。

・地域の伝統工芸や文化資源を現代向けに再編集すること
・新しいブランドの立ち上げや再構築を支援すること
・日本の文化を海外へ届けるための戦略設計と展開支援
・コミュニティ型の資金循環モデルや事業モデルの設計
・Web3やAIなどのテクノロジーを活用した新しい仕組みづくり

私たちは、ロゴをつくる、SNSを運用する、といった表層的な支援にとどまりません。

「誰が価値を生み、誰に届き、どのようにお金が循環するのか」
「地域にどんな主体性が残り、どんな力が育つのか」

そこまでを一体で設計します。

最終的な目標は、BranPeakがいなくてもプロジェクトが回り続ける状態をつくること。
外から“支える”存在ではなく、地域が自ら走り出せる構造をつくることが、BranPeakの役割です。

SECTION05

なぜAIやWeb3を活用しているのですか?

地方の事業者さんが、「うちは小さいから無理」と言う場面を何度も見てきました。

でも今は、AIを使えば市場分析や戦略立案が可能です。
小規模でも、世界に発信できる時代です。

Web3は、コミュニティみんなで支える仕組みを作ることができます。
特定の大企業に依存するのではなく、参加者が主体になる形です。

テクノロジーは目的ではありません。

「地方でも世界と戦える状態をつくる」ための手段です。

SECTION06

河野さんにとって「仕事」とは何ですか?どんな哲学を持っていますか?

私にとって仕事は、「生き方そのもの」です。

キャリア時代は、成果を出すこと、評価されること、数字を伸ばすことが中心にありました。それは間違いではありません。でもあるとき、「この成果は、私の人生とつながっているのか?」と自分に問いかけるようになりました。

そこから、私の中で仕事の定義が変わりました。

仕事とは、
自分の思想を社会に実装する行為だと思っています。

どんな未来を見たいのか。
何を残したいのか。
何に違和感を持っているのか。

それを形にしていくプロセスが、私にとっての仕事です。

だからこそ、思想のないビジネスは長く続かないと感じています。売上やトレンドだけを追いかけても、どこかで迷子になる。

一方で、理想論だけでも意味がありません。思想は、実装して初めて価値になる。

私は常に、「これは構造として持続するか?」「誰かの人生を前に進める仕組みになっているか?」と問い続けています。

そしてもう一つ大切にしているのは、「人が主役であること」。

プロダクトやテクノロジーはあくまで手段です。
本当に価値があるのは、その背景にいる人の物語や覚悟です。

仕事とは、
自分の覚悟を、社会に差し出すこと。

それが、今の私の仕事観です。

日本の価値を、世界で“続く形”に。

Turning Japanese values into something that lasts globally.
STORYTELLER 河野 友香
BranPeak合同会社 創業者兼CEO

LVMHグループ Marc Jacobs、DIESEL、Triumphなど、外資系ラグジュアリーブランドで日本市場のデジタル戦略の統括を経験。2023年に独立し、BranPeak合同会社を設立。文化・地域・テクノロジーを結ぶ事業を展開する。西陣織や佐賀錦などを中心としたヴィンテージ帯を再編集したブランド「Musubu STUDIO」を立ち上げ、カンヌやモナコで発表。Web3やAIを活用し、地方が自走する持続可能な仕組みづくりに挑んでいる。

Editor's Message 編集部から

取材を通して強く感じたのは、河野さんは「流れに乗った人」ではなく、「流れを選び直した人」だということでした。

外資系ディレクターというポジションは、多くの人にとって“ゴール”に見える場所です。けれど彼女にとっては、そこは通過点だったのかもしれません。

印象的だったのは、「思想は実装してこそ意味がある」という言葉です。

理想を語るだけでも、成果だけを追うだけでもない。
未来に残したいものから逆算し、構造をつくる。

華やかな舞台であるカンヌでの発表も、Web3やAIの活用も、すべては一貫した問いから始まっていました。

「私は何を未来に残したいのか。」

その問いに向き合う勇気は、簡単なことではありません。
けれど、起業とは本来、その問いを引き受ける行為なのだと改めて感じました。

もし今、少しでも迷いがあるなら。
一度立ち止まり、自分自身に問いかけてみる。

この記事が、そのきっかけになれば幸いです。

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